音感習得のためのスケール練習について


—スケール練習について その1

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 これはトラブルシューティングにおいて、(2)が駄目な人のために書かれたテキストです。僕自身がそういう人間であり、それをある程度克服するのに模索したいろいろなことを書き留めました。もし読んだあなたに、何か役立つことがあれば、望外の喜びであります。

 

ところで、君、スケール練やってみてくれる?
といわれると、大抵の方は、


ex.1-1.「とりあえずビール」的スケール

 と、こういうのをするのではないかと思います。とりあえずこれ、基本ですから。ここではCのキーを挙げましたが、より楽器コンシャスなトレーニングを受けた場合、Bbのキーが最初に浮かぶかもしれませんが、いずれにしろ同じことです。

 おそらく、二三年は吹奏楽かオーケストラでやっている人なら、12のkeyすべてでできると思います。あと、3度毎の、ドミレファミソ……というやつも。4度跳躍、5度跳躍は、まぁお好みでしょうか。とりあえず、このページはすべてのKeyでドレミができるのを前提としています。できない人はまずそれを練習すること。

 

 ところで、このスケール練に関しては、ジャズのアドリブの練習としては決定的に望ましくない部分があります。

 それはなにかというと、ずばりフェルマータ。
 あるキーから次のキーへ移動する際に、テンポを一旦止めてしまうか、4拍(一小節)休みをおいてしまうのは、練習としてはあまりよくありません。

 むしろ、調が変化する瞬間こそを練習しなければいけません。一つ一つの調性内での移動ももちろん大事なんですが、そのスケールから次のスケールにうつる瞬間の変化が非常に重要です。特に、ジャズでは。「スケールからスケールに移る部分」をよく意識して練習をするべきなんですね。

具体例です。


ex.1-2.上行下行

記譜を簡単にするため、基本のスケールを八分音符にまとめます。

こんな風な練習はどうでしょうか。


ex.1-3. キーチェンジのためのスケール 1(2小節毎)

「ドレミファソラシド」「ドシラソファミレド」という上行→下行のスケールを半音ずつキーを変えて登って行きます。この時、必ずテンポを保つことを忘れないで下さい。この練習で意識すべき重要なポイントは、スケールそのものよりも、スケールとスケールの間の複小節線なんです。息継ぎは、どっかで上手にして下さい。キー・チェンジの部分の意識を切らさないために、小節の切れ目以外やること。

 一応、説明のために譜面にしましたが、譜面を作ったりみたりする必要はありません。むしろ邪魔といえるかもしれません。重要なのは譜面をさらうという意識ではなく、頭の中でしっかりとドレミファを唄うことです。また音が高くて駄目ならそこから一オクターブ下げても構いません。(繰り返しますが、これは、複小節線のための練習だからです。)

 

 複小節線=キーチェンジが起こる部分の練習ですから、キーチェンジの出現する頻度が増えれば増えるほど、練習としては面白くなってきます。


ex.1-4. キーチェンジのためのスケール 2 (1小節毎)

 今度は一小節ずつ、調が変わります。「ドレミファソラシド」を繰り返す場合、フレーズの始まりと次のフレーズの間に一オクターブの跳躍があり、ここで意識の途切れ目ができるので、上行〜下行を交互に吹くようにしています。こうするとパッセージ上はなめらかですが(なめらかであるからこそ)、むしろ頭の中での処理は難しくなります。

 僕自身は楽器のアップの段階のルーティンの練習で、こうしています。ピッチをあわせたりするにも最適だからです。

 お気づきと思いますが、この場合、上行〜下行という二小節で半音が二回、合わせて全音ずつ上がっていくので、練習のパターンとしては in Cから始めるのとin Dbから始める二種類の形があります。当然、両方ともためしてみて下さい。

 また、出だしのフレーズが「ドシラソファミレド」と下がるところから始まるパターンもやってみましょう。実はこれ、in Cから上行するパターンとin Dbから下行するパターンは同じなので、本質的には2種類しかないのですが、譜面をさらわず、頭の中で唄わせる場合、どちらもやってみればいいと思います。


ex.1-5. 下行系のバリエーション

 それから、先ほどの半音ずつキーが上昇するパターンとは逆に、半音ずつ下行するパターンもありますね。下行パターンでも、先ほどの上行と同じく、4つのバリエーション(本質的には2種類ですが)を試してみればいいと思います。

 実際、ジャズにおいて有用なのはどちらかというと半音上行よりも下行と思いますが、しかし、この練習自体は、まず、any key練習の初歩段階ですから、あまりこだわらないで両方試してみて下さい。

 上に挙げたようなことが、ほとんど何の苦労もなくできる場合、しっかりした音感を持っているということで、特に練習をする必要はありません。言い切った。


 Ad-libをする、究極の目標は「唄うように演奏する」ということだと思います。もし頭で考えている音と楽器から出ている音がずれている場合、その原因は音感にある可能性があります。

 トラブルシューティングでも少し書きましたが、トラブルシューティングの(2)ができる人間とできない人間というのは画然としています。できない人間からみると、全く苦もなくできる人間はまるでニュータイプのように見えることでしょう。この手の感覚が鈍い人間は、いわばオールドタイプなわけですが、ジャズのアドリブをするに際してちょっと厳しい立場にあるのは間違いない。しかしオールドタイプとはいえど、いやオールドタイプであるからこそ、その為の修練をしなければいかんわけです。

 「ドレミファソラシド」というのを最も簡単な曲とみなせば、このスケール練習は、トラブルシューティングに出てきた(2)のベンチマークテストを拡張したものであることがおわかりかと思います。もし、これらのスケールが上手くできない場合、あなたは唄う様には吹けていないだろうと思う。

 しかし、できない場合は、練習すればいいんです。ま、あなたのやりたい音楽が、全く西洋音楽の要素を排除しようとしているか、平均律理論から敢えて脱却しようとしているのなら別ですが。

 確かにこのような練習方法は、明らかに遠回りな方法です。3ヶ月後にソロをしなくては!というような状況には向いていません。しかしあなたが学生で、漠然とソロができるようになりたいけれどもやり方がよくわからない、とりあえず時間はある、という時には方法の一つとして試してみる価値はあると思います。地力とか地肩を作る練習の一つですね。

 ま、正直いいまして、このスケールは、きっちりやれば多分一ヶ月くらいでできるはずです。通常のドレミファソラシドの枠を越えるものではありませんし。

このメソッドをひと言で言いますと、

(a)任意の「基本となるフレーズ」を
 インテンポで
(b)キーチェンジさせる
(a)基本のフレーズ
(b)キーチェンジ

というだけですから。メソッドと言える代物でもない。
 しかし、このメソッドのいいところは、自分の好きな風にどんどん拡大、拡張できるところです。

拡大の方向としては、

が考えられると思います

以下それを具体的に示していくことにします。