Charles Mingus考


 結論から言えば、彼は、二流の素材(ジミー・ネッパーとか)を集めてつくるB級グルメだ。

 おまけにみんなに「あの語りさえなきゃなぁ…」と思われてる面倒くさいラーメン屋のおやじみてぇだ。

…「本読み禁止・おしゃべり禁止」、客に怒鳴るの当たり前、
 そのくせカメラを向けると語るわ語る。

 アジテーターの彼の振る舞いは、確かに当時の黒人の置かれた状況には同情の余地はあるものの、げんなりさせられてしまう。

 だが、純粋に音「だけ」聞くと、巧妙なアンサンブルと骨太なビート。
 単純に「かっこいい」。


 『直立猿人』に代表されるような深遠な(もっと言うと頭でっかちな)タイトルの要素は音からはあまり感じられないのである。むかしのボキャ天でいうところの「バカパク」系、といったところか。

 −−ワークショップ、とか言ってみたり、難解なアルバム名といい、深遠さを気取っている人に限ってあのような大脳皮質抑制脳幹部直撃サウンドなのは、彼一流の冗談だったんだろうか。しかし、確かにサウンドは深い。

 ラーメン屋のオヤジ(ミンガス)の性格や騙り、ウンチクはともかく、
出来上がった『上手いラーメン』(LP/CD)は評価しなければならん。


 僕にとってミンガスの音楽はどのような位置を占めているかといわれると、実はあまり語るような思い入れはない。常に僕の周りには、僕よりミンガスが好きな人が居て、ミンガス好きぶりを熱く語る彼のそれを、ふーん、いいなあと思って眺めていた記憶ばかりがある。

 特に、高校時代にかなりミンガスが好きな友達がいた。彼が色々貸してくれたおかげで、自分ではあまりミンガスを買わなかった割には、相当マニアックなミンガスも聴いたことがあるのだ。しかし、カセットテープにダビングしたものは残っているけれど、今は再生できない。端正込めて題字や曲目を手書きしたそれらのカセットは、今ではただの「懐かしい想い出箱」と成り果てている。

 その後、自分でもいくつかCDも買ったけれど、ミンガスは、人に貸したりして無くなることが多く、なぜか手元に残らない。Mingus mingus mingus mingus mingusなんて二回も買ったけど、二回とも無くした(Freedomという曲がすきなのだ)。どうも僕はミンガスと縁がないのかもしれない。

 例えば、最前中古レコード店で久しぶりにミンガスを買ったが、このCDは、起伏からいうと、ハリウッド映画のようなはっきりした起承転結ではなく、なんとなく始まって、決して盛り上がらないわけではないが、なんとなく終わるという、まるで単館上映の文学映画みたいな作品。僕にとってはあまりわかりやすくないCDである。

 曲間の空気感はあくまで重い。「甘辛苦酸」に分類すると間違いなく苦であろう。もしくは苦よりの辛。

 ところで、ミンガスの作品の題名は、どれも「かっこいい」と思う。この題だって、まるで若者向けの劇団の公演名かおぼしきかっこよさだ。こういったけれん味は、たとえばオスピーには全然ない。


参考:
arrowC.mingus Home Page  英語だが、ミンガスのdiscographyあり。これは便利だ。