Miles Davis考

その1


 マイルス、という人間を語るのは難しい。

 Hard-Bop全盛のころ、彼のプレイはクールで抑制の利いたものとして耳目を引いたが、勿論それだけが魅力の中心でもない。別の時代、別の場所では結構吹き倒している。たとえば"Four and Moreなど"では、かなり熱い演奏をしている。

 また、ミュートプレイの音色にも特徴があり「ミュート音こそマイルス」という意見もある。しかし開放音も負けず劣らず素敵だったりするのである。

 プレイスタイルにしたってしかり、ジャンルにしたってしかり。とにかく、いろんな要素を持つ。持ちすぎている。

 故にそれらの各要素が統合された『ゲシュタルトとしてのマイルス個人』というのを想像しにくい。一面的に語られるのを決して許さないのが、マイルスという人物なのだ。

 私はマイルスという人間を考えるとき、ピカソの人物画を思い浮かべる。色々な顔が色々な方向を向いて、その多様なアスペクトが一つの像として集約されている。

 そう、マイルスこそはキュービズムなのだ。

その2



「どの時代のマイルスが好きか?」という議論は

「スカイライン、何代目が一番いい?(ポルシェでもいいや)」との議論同じで、
不毛だからやめましょう。所詮好みの問題に過ぎぬ。

 ただ、同時代人との比較をした場合、つまり相対評価を行った場合、50-60年代のマイルスは他と比べて突出していたのは確か。復帰してからの80年代マイルスは他のミュージシャンすべてがかすんでしまうほどの牽引力は残念ながら持っていなかったと私は思う。

 そういう観点では、50年代末期からビッチェス・ブリューまでの人気がピークである、と言えなくもない。
 ただそれは、総ての人がこの時代のマイルスが一番好きだ、という事にはならない。同時代との比較、つまり横糸でみればそうかもしれないが、マイルスという個人を追いかけて縦に綴ると、70年代、80年代、共に「マイルス的に」いい仕事をしていると思うのだ。


その3 残念ながら

 ジャズの申し子であるマイルスは積極的にトロンボーンをメンバーに加えることは殆どなかった(特に60年代以降)。それはマイルスから見て「使える奴」はトロンボニストには見あたらなかったということなのだろう。
そのあたりも、寂しいところではある。
お恨み申しまする、マイルス様。

注:1962の一期間中、マイルスは J.J.ジョンソン、ロリンズ、ケリー、チェンバース、コブとのクインテットを編成しツアーを行っている。だから全くTbとの関わりがないわけではないが、少ないのは確かである。

参考までに:
arrowマイルス公式ページ日本語ページ。Visual面も充実。
arrowthe Sound of Miles Davis Site 英語だが こちらも膨大な情報量。
arrowmiles  こちらも有用。

ちなみに僕はプラグド・ニッケルのジャケが好き。(ジャケだけ)。
あと、Human Nature。