Fred Wesley考:


 ご存じ、JB'sのtrombone。
最近はジャズのアルバムも出している。

それも、ファンク畑の人が「なんちゃってジャズもやってみました〜」という感じではなく、真面目に取り組んでいるようにみえ、好感が持てる。なんかね、「ジャズ好き感」が漂ってくるんだねぇ。それもそのはず、昔はカウントベイシー楽団にいたとか、いないとか。

 とはいえ、ソロはファンクを吹いているときと同じ。コードなりに吹いてる、ほんとに素直なフレージングなのだ。いやな言い方をすれば「ドレミソロ」なんだけど。

 聴く側にとっては、歌ものコードで吹いてるWesleyは新鮮であるが、基本的にはファンクでの一発ものと同じ意識で吹いているようだ。従ってコピーして譜面にしてみてもあんまり素直すぎて、いっこも面白くない。

 しかしだ。CDを聴きながらWesleyさんと一緒に吹いてみると、これが!非常に楽しいのだ。

 音域も広く、フレーズのスピードもなかなか。声量が豊かなため、速いフレーズも息のスピードでコントロールしている感がある。この点ではFreddie Hubbardに少し似ているかもしれない。

 車でいえば「アクセルで曲げるドリフト」といった感じだ。Wesleyの楽しさは、この、疾走感にあるのだと思う。

 だが、冷静さ、明晰さなどはあまり感じない。巧妙ではあるが、狡猾さはない。

 例えばMilesは曲が佳境にゆくに従い明晰さを増してゆく。Milesの支配する特別な空間で、すべてがMilesの思惑通りに動き始める時間。

 冷たく輝く蒼白い星は本当は最も温度が高いことを忘れてはいけない。

 「盛り上がる」イコール「あつくなる」という単純な公式に準じるWesleyは、それとは対照的に、盛り上がれば盛り上がるほど視野が狭くなっていく感がある。

猪突猛進。

 …ほら、いるでしょう。ジャンプの漫画に出てくる海賊の大親分みたいな体力バカタイプ。ブル・ファイターだね。

 敵が力比べを挑んできたら、力比べに応じちゃったり、殴りあいだけで勝負して「やるな(笑)」「…ふっ、お前もな。」とか言って二人でにやにや笑いあって、最後は勝負なんかどうでも良くなっちゃったり、一本気な主人公に同調なんかしちゃったりして、真っ先に敵側から転向して、参謀的な役割のNo.2に深手をおわされちゃうような奴が。

 曲の盛り上がりで決して頭いいフレーズにいったりせず、ひたすらフレーズの刻みが細かくなる方向で「頑張る」Wesley。


 …しゅっしゅっしゅっしゅっ。
 重機関車である。
もっと石炭を釜に入れろ〜。もっとアクセル踏め〜。

 決して、敵の攻撃を避けないのである。

 

 私はFred Wesleyが好きだ。 こんなに揶揄してるけどね。

 Milesの様な深遠で重層的な世界は持たないが、一流のスポーツ選手と同じスピード感や躍動感をもつ彼は、きっと凡人の我々とは違う目で世界を見ているに違いない。

 そして、多分それはMilesよりも「楽しい世界」の様な気がするからである。

(2000初稿)