My Song


 ECMでのキースジャレット代表作の一つであろう。

 ECMというのはジャズのレーベル名である(※)。一言で言い表すことは難しいが、「抽象的」「透明なサウンド」がキーワードで、実情は現代音楽とジャズ、インプロビゼーションの融合だ。

※ 詳しくは→ECM研究会をどうぞ。

 ECMサウンドというのは一つの形式美である。どんなアーティストでも、ECMレーベルでの作品はECMレーベル固有のテイストになる。

 これは「どんなミュージシャンでもブルーノートならブルーノートの音になる」というのと似ているようで少し違う。「ブルーノートの音」というのはあくまでも録音の時に録音技師によって形成される音のことであって、音を出す時点ではミュージシャンの意志が主体である。ECMはどのような音を出すか、そういう根元的なレベルにおいてレーベルの意志が働いているように感じられるのである。

 ECMレーベル参加ミュージシャンの中でも、キースジャレット、ヤンガルバレクは耽美派といってもいい。

 しかし実はこの御大二人に関しても、本質的には他レーベルと違いはないにしろ、やはりECMでは少し「お行儀がよい」ようにも思える。あんまり逸脱しない。整合性に気を遣っているように思えるのだ。


「時間です!よろしくお願いします!」
「おうそうか、ご苦労さん。
 おい、キース! 聞いてるか?
 ええか、キース? 頼むからよ、いっつもみたいに あ〜〜とかう〜〜〜とか言ったりせんとってくれーよ! ええか? 頼むで。
 あとあんまり がーっと独りだけ行くんも、なしやで。
 あへ〜 って椅子から腰浮かして妙な姿勢にもなるなよ。

 ちゃんと座れ。

   「あと、ヤン、お前!! 頼むからお前もあんまりピロピロすんなよ!
 ピロピロはなしやで!!ニュルーっとテーマ吹いとったらええんじゃ。
 わかったか?ピロピロすんなよ!

 余計なことすんなよ! ええな!!」

 と二人は録音前にECMの「社長」(ヨゴレ的なニュアンスで)に説教くらっているに違いないのだ。もちろんこれは僕の勝手な妄想なのだ。でもCDを聴くたびにそんな感じにやっぱり思えてしまうのだ。

 とはいえ、キースもヤンも テーマの所では忘れずにいい子にしているのだが、ソロの途中でやっぱりピロピロしたりガーッとしたりしちゃっている。

 きっとサブで社長は「あっちゃ〜…」 と落胆しているに違いないのだ。


(May 2003 初稿)