Do you like a fountain pen?


文具の話  1

 私は書き物をする際万年筆を主に使っている。
 

 初めて文具に凝ったのは高校生の頃だ。

 小学生の時分はまったく無頓着で、周りが「何面の筆箱」(←懐かしいなぁ、今でもあるんだろうか) とか「スーパーカー」の絵の筆箱とか、削る角度の変えられる鉛筆削りを見せびらかすのを尻目に尻ポケットに適当な鉛筆をさして、消しゴムも、ちんちくりんのかけらをもって学校に行っていたものだ。

 その反動か、高校生になってからは文具に気を使うようになった。普通高校生の文具というとソニープラザとかで買ったかわいいデザイン系に走るのだが、私の場合「凝り」は主としてデザインではなく、実用性に向けられていた。無骨な男子校、それも進学校の学生であったせいかもしれない。

 事務用消しゴムでもメーカによって消し味が違う。シャープペンシルの濃さがどうの芯メーカーはどこそこのは固着剤の糊の感じが気にいらんとか、数学の時は鉛筆、特に三菱のHB。バインダーはこれこれがよく、××式はいまいち。蛍光マーカーは嫌い、等々。

 他愛のないものだが、まるで「暮らしの手帖」の比較レポートのように詳細に書き味、消し味を検討したものだ。

 とはいえ、学生なので、このころは皆と同じく、鉛筆orシャープペンシルを主に用いている。シャーペンの芯も0.3mmから0.7mm、硬さも2Fから4Bまで色々試したものだった。

 大学に入ると書き物自体が激減し、筆記用具を持ち歩く意義がなくなった。

 嗚呼、本邦大学生の嘆かわしさよ…しかし、それで事足りるのだから仕方がない。当然のように「凝り」は無くなり、そこら辺にある50円のシャーペン、芯も買ったときに入っているやつ(たぶんHB)ですませるようになった。大体その1,2本を使ううちにどっかに行ってしまうのだ。そして、新しいのを買う。
その、繰り返し。



 状況が一変したのは教養から医学部本学にあがってからだ。

 当然のように講義が多く、板書のノートなどの比率も増えるし、試験前には受験生当時と同じくらい筆記具を使用する。実習が始まってからは病棟に頻繁にあるせいか、ボールペンを使用するようになった。

 しかし、このボールペンというのがどうも苦手なのである。

 書き始めはすこし もわもわっとするし、ペン先からの感触も固く、衝撃が爪に直接響くような気がする。よくある安いボールペンのあの持ち味と来たら…(尤も、私の筆圧が高いせいもあるかも知れないが)

 兎に角、ボールペンを使うとただでさえ汚い字がさらに汚くなり閉口する。

 そこで、試行錯誤の結果、万年筆に落ち着いた。

最初は使い捨ての200円くらいの安いものを普通のペンと同じ感覚で使用していた。そこそこ満足していたのだが、6年生の暮れに、思い切って、watermanの一番安い奴を買ってみた。


 ああっ すげぇ 書きやすい……

 紙にペン先を乗せる、その重みでペン軸が少ししなる、それが絶妙なのだ。ボールペンは固いだけ。万年筆は私の筆圧を優しく受け止めてくれる。

 そして、使い捨ての安い万年筆はペン先が紙の繊維に引っかかるのだが、これは全くそういうことがない。ペンを握る部分(ペン軸)も普通のボールペンとは違って少し太く、持ちやすい。重さのバランスもいい。

 書き物をしていても疲労感がなく、非常に快適だ。書くことが快感につながるという経験は初めてであった。きっと使っているときは脳内でエンドルフィンが出っぱなしに違いない。

 もっとも、いくらそうやって気持ちのよく字が書けても、もともとの字自体は悪筆なので、字が綺麗になることはないのだけれど。


参考:

 俄万年筆ファンには生活舎川窪万年筆店が大変便利です。
万年筆に限らず文具全体ですが、高畑正幸のHPはこれまた面白いです。