くつずみ


—夢  その6

 お盆を過ぎた今頃になってやたら暑い。夜も寝苦しく、朝起きると顔にオイルでも塗ったように妙な汗をかいているこの頃である。
 とにかく寝起きはべたべたする。

 塗りたくるように顔をこすり回すと、無精ひげの感触がざらざらして気持ち悪い。

 洗面台に向かい、顔を洗おうとするが、いつもよりまばらに頬にちょびちょびとひげが生えている。その数が妙に多い。

 へんだな、昨日剃ったのに…

 ふと見てみると 眉毛の毛がほとんど抜け落ちている。

 びっくりする。

 しかし朝なのであくまでも反応は鈍い。

 しばし自分の顔を眺めてから、数十秒後、あ〜……、とつぶやくのみでそれ以上の言葉は出てこない。

 あ〜〜

 どうやってごまかそう…

 朝なのでとにかく頭が働かない。

 大きな車輪を転がすのに、最初の一転がりができれば後は惰力で進むのだが。

 くつずみなんかどうだろう。

 靴墨?


 夢だった。

 もう一度起きて見てみると 普通の眉毛だった。

 6時にかけた目覚ましはとまっており、今度起きたのは7時20分であった。

 本当に一度起きたのか、それともすべて夢の中だったのか。
 くつずみ?

 そしてこの夢は一体何を意味しているのだろう。

 くつずみ、くつずみ…

 くつずみ…と呟きながら家を出る。

(May,2003初稿)