三人も



—夢 その7


三人も殺してしまった。


 

 起きたら汗びっしょりであったが、夢の内容はあまり覚えていない。目を覚ますと、額にぬるりとした汗が流れているのに気づく。しばらく天井を見ている。汗が蒸発してゆくにつれて、記憶も滲んだようにぼやけていく。

 いきさつはよく覚えていないのだが、僕と親しい看護婦さんAがいて、その看護婦さんの男友達を僕が頼まれて二人殺すのだ。そして、その看護婦さんの友達の看護婦さんBをも殺す。

 殺したところから夢は始まった。殺した事実のみが夢の中の僕の心に刻みつけられているのだが実際に殺したシーンはなかった。

 殺した手口もどうやら三人とも同じらしい。最初に殺した男二人はほとんど僕とは関係がないので警察にばれることはないだろうとたかをくくっているのだが、看護婦さんBになるとこれは自分の関係する職場なのできっと聞き込みにも来るだろうし、捜査線上に上がってしまうだろう。どうやって警察官に気づかれないようにしようか、捜査に来たときには前もってどういう風に言おうかと夢の中の僕はびくびくしている。

 どうやら夢の中の僕はあまり計画的ではなかったらしく、決定的な証拠品を現場に残したような、そんな気がしている。いや、たぶん残している。間違いない。

 嗚呼。

 どうしよう。


 どうしようどうしようと考えているうちに目が覚めた。



 目が覚めても夢の中のディティールはどんどん忘れてゆくのに「三人殺した」というキーワードだけが頭の中に残り、どうしようどうしようとシャワーを浴び、どうしようどうしようと仕事へ向かった。
 

 ちなみに登場人物の看護婦さんAとBという人はまったく現実の人そのものではなくて、誰かと誰かがちょこっと混ぜ合わさったようなぼんやりしたイメージである。とはいえ、看護婦さんBはたぶん大学のクラブの同回生だった(もちろん看護婦さんではない)。看護婦Aは大学病院で病棟にいた、全然親しくない看護婦さんだったように思うがよくわからない。案外クラスの同級生とかだったかもしれない。


(Jun. 2003 初稿)