Wilkinson's Ginger Ale


初めに断っておくが、私はジンジャーエールが好きなのではない。
ウィルキンソンのジンジャーエール』が好きなのである。
 

 大方は「ジンジャーエール」といって思い浮かべるのは『カナダドライ』ではないだろうか。コンビニエンス・ストアやリカーショップに行って、ごく普通に店に並んでいるのは間違いなくこれである。(ごく稀にシュウェップスもある。)。

 もっと若くてもっと新陳代謝が盛んで、もっとカロリーを必要としていた頃、コカコーラだとか、ファンタだとかこの手のクソ甘い飲み物を飲んだものだ。しかし、年をとり、食事と共に酒が出ることが多くなると、こういう飲み物を欲しなくなった。

 今、自動販売機をみてもこの類のドリンクを買うことはほとんどない。若さゆえに許される砂糖水なのである。
いわゆる、ジンジャーエールも、そういった類の飲み物の一つだ。

 ところで皆さん、疑問を持ったことは無いか?
Ginger Aleの「Ginger=生姜」という言葉に含まれる意味を?
 

その由来:

歴史をひもといてみる。
 その昔、炭酸水は薬局にて購入するものであり、各自家庭で様々な香辛料を入れ、飲みやすくしていた時代があった。そういう香辛料入りの飲み物の中で、生姜をベースにしたのがGinger Aleであり、コカ・ナッツをベースにしたのがコカ・コーラというらしい。

 ジンジャーエールは名前の通り、生姜をフレーバーとしたアルコール抜きのビール(=エール)であり、色は濃い茶色が普通であった。

 しかし1904年、マクローリンという男が色の薄い "Pale Dry Ginger Ale"を発明した。マクローリンは研究を重ね、ついには"Canada Dry Pale Ginger Ale"と呼び、他の商品とは一線を画し、飲みやすくかつ生姜の元を感じさせない非常にソフィスティケイトされたブレンドを作ったのである。

つまり、今普通に飲まれているGinger Aleこそは猛烈な企業努力の賜物によるのだ。ソフト・ドリンクとしてはコカ=コーラと同じく一種完成の極みに達しているといってもあながち言いすぎではあるまい。

WilkinsonのGinger Ale

それに対し、Wilkinson社が出しているジンジャーエールはいわゆる「昔ながらのジンジャーエール」なのである。愚直なまでにGinger=生姜の味がする。口に含むと「まさに生姜」の刺激が舌を襲う。辛い。これに比べると、「Canada dry」はいかに「飲みやすく」できていることか。

 口悪く言えば、『生姜入り砂糖炭酸水』なのである。
しかし、Wilkinsonは、旨い。

 炎天下、のどを鳴らして飲むには全く不向きな飲料だが、(むせますからね)、夜、独りで、いや、二人で飲み交わすにも風情のある飲み物である。私はアルコール、いやさエタノール(嫌いだからこういう言い方になる) が嫌いで、その賦活効果があまり好きではないので、Barにこれが置いてあると非常に重宝するのである。

 瓶の形も綺麗だ。手になじむ波形が瓶の横腹に入っているが、実に持ちやすく、優しい曲線である。

 売っているところが少ないのが残念だが。意外と安い。80円。アサヒ飲料が作っている。気の利いた飲み屋ではおいてあるところもある。
 

 ここで、注意。店ではよくこのジンジャーエールのことを「ドライ・ジンジャーエール」と紹介される例が多い。確かに普通のジンジャーエールより「辛い」=ドライと思われるのも尤もなのだが、正確には普通のジンジャーエールこそが「ドライジンジャーエール」なのである。

 必ずこのことは酒場で蘊蓄をたれるように。
 きっと厭がられるから。


※これを書いたのは確か2000年の5月くらいで、この頃はまだまだ膾炙していなかった。岡山、島根はいうに及ばず、神戸でもあまり置いていなかった(東京は知らない)。だが、カフェブームのせいか、現在は「オサレ」飲食店では必ず置かれている定番アイテムとなったのは諸兄よくご存じの通りである。
 手に入りやすくなったので、ずいぶん助かっている。