餅 もしくは赤飯:



 僕はながらく独り暮らしで、気ままな根無し草生活を送っている。だから家族が集まったりする初詣などの正月らしいイベントにはさっぱり興味がない。

 医者になってから正月に実家に里帰りをしたのは大体50%くらいではないかと思う。別に正月のイベントには未練もないが、ただ一つ心残りなのは「餅」だ。

 僕は女の子も大好きだが、餅も大好きだ。

 餅のような女の子だったら最高だ。うそ。
 

 アルバイト先へ行くのにいつも新幹線を使っている。普段は病院から支給された回数券を使っているのだが、この年末年始の時期だけは、回数券が使えない。たいそう不便だ。

 で、さらにいうと正月三が日ではなく1/28-1/6という微妙な期間なのである。……仕事、始まっとるがな。どうしても一度は回数券が使えない日が発生する。券売機で切符を買わなければならず、なおかつ混雑している。実に面倒くさい。ちなみに、お盆も。

 新幹線でバイトに行くようになって三年目なのでいい加減慣れたが、新幹線の常連客に余分な負担を強いるこの仕打ちはあんまりではないだろうか。常連さんこそ普通は大切にするもんだろうよ。

 これで、Uターンラッシュに巻き込まれたりすると、さらに最悪なのだが、今日は幸いすいていた。
 
 もちは、おいしい。

 しかし、なぜ、おもちを食べるのは正月の後のこの時期に限られるのだろうか。

 昔は貴重品だったんだとは思う。だから特別な日に食べるのだと。
 それはわかる。

 だが、今は現代で、物質的には恵まれている時代だ。お餅をおいしいと思っている人間は少なからずいると思うが、そうはいっても、一年を通じて主食をもちで通す人を、僕は聞いたことがない。百歩譲って、冬の間は餅しか食べないとか、それもない。それとも、コメ処ではそういうこともあるのかしら。

 許されるなら僕は毎日だってお餅を食べたいと思うほどの餅好きだ。炭水化物を主にお餅で摂ってもいい、とさえ思うのだ。でも、なんだか毎日餅を食べるのは社会的に後ろめたいイメージがある。なぜだろう。

 餅の特性はあの粘りにあると思うが、餅の粘りのもとになっているのはアミロペクチンという成分が並はずれて多いせいだそうだ。東南アジアのインディカ米に比べ我々が普段食べているジャポニカ米はもともと粘りが強いが、それよりもさらに粘りが強いモチ米というのは、世界最強の粘度を持つ穀物といってもいいだろう。我々はこのユニークな特性にもっと日常的に親しんでもいいのではないだろうか。

 おこわも餅も、ハレとケでいうとハレの領域に押し込められたままだが、もっと日常の領域に進出してほしいと思う。ハレの地位に留まっているのはある種の敬意が払われているにほかならないが、うかうかしているとそのまま忘れ去られてしまう。水泳大会がなくなったら、同時に忘れ去られたおりも正夫みたいに。

 実は私、一年ほど前から、コンビニに売っているおにぎりに「赤飯」があれば必ず買うようにしている。もちもちして、おいしい。コンビニレベルではあるが、日常的にモチ米に親んでいる最中の私だ。

 ちなみにセブンイレブンの赤飯はあまりおいしくない。粘らない。ローソンの方がネバネバしておいしい。同じ品物を比較すると大抵はセブンイレブンの方がおいしいように思うが、赤飯に関してだけはローソンが勝っている。もっとも増粘多糖剤でも入っているのかもしれないが。
 

 というわけで、今日も赤飯のおにぎり片手に、新幹線に乗り込むわけである。ちなみに飲み物はカフェラテだ。無茶苦茶ミスマッチではあるが、これも僕の奇食嗜好の一つである。

 なぜ、回数券がダメなのかと考えていて、やっと理由がわかった。

 帰省客が、たとえば団体で回数券を購入して分割で使うと割安になる。特に家族連れなど集団で動くことが多い盆正月にはそういう使い方を防止したいんだな。そうか。


 三年も同じ目に遭いつづけて、気づくのが遅いような気もするが、ようやく納得。

 ん?
 今まで気づかなかったのに、なんで今年は気づいたのか………
 ……んん……
 去年と今年で、何が違うのか……
 ん?……

 んー

 そうか!
 赤飯だ!

 赤飯のお陰だ!

 みなさーん!おもちを食べると頭がよくなりますよー

(2005.Jan 初稿)