A buckwheat noodle with WASA-BI

蕎麦と山葵

 蕎麦(そば)を食べる。
 蕎麦はざるに限る。濃いつけつゆに山葵(わさび)をまぜて食べるのだ。
ちゅうるちゅうると。
 しかし、なぜだろう。なぜ、山葵?
 

 例えば、素麺(そうめん)や冷やしうどんでは生姜(ショウガ)が定番だ。素麺ではその他にキュウリ、錦糸卵、ゴマ、紅生姜などのいろいろな薬味ものっける(※)。
 これはわかる。うどん・素麺など小麦原料のこれらの麺は際だった味や香りに欠けるからである。従って薬味を使って新味を出すのは極めて合目的な行為といえる。生姜もこれらのフレイバーの一つとして捉えるとよい。

 しかし、蕎麦の場合は話が別だ。蕎麦には麺自体に独特の香ばしさがある。この香りが蕎麦通にはたまらない訳だ。ここで山葵を使ってしまうとせっかくの蕎麦の風味を殺してしまいはしないか。

 それに、山葵というのは、原則として刺身などの魚介類の生臭さを消すのに使われるはずだ。蕎麦の香りはわさびによってうち消されるべき類の香りではなく、いわゆる香辛料の使い方の原則からも逸脱している。


勝手な解答

 というわけで、なぜ蕎麦に山葵をつかうのか、さっぱりわからなかったのだが、このたび僕の中で答えがでた。

 この事例に関してのみ、山葵はいつもとは別の役割なのである。ただの「におい消し」ではないのである。いつも脇役で、個性派俳優といわれていた地味な役者が、準主演の役をするようなもので、今回は山葵と、蕎麦が、一つの共通の目的のためにハーモニーを奏でているのである。

 その目的とは、「山」。

 蕎麦も山葵も米作りなどに適さない山で採れる作物である。それでこの二つを使うことで、「山」風味を出そうとしているのではないか。日本人のBon-Sai culture(盆栽文化)と同じく、一個のざるの上に山に属するものを配置し、構成された食の小宇宙。今風に言えば、「山のジオラマ」なのである。まったく、日本文化の奥深さには日本在住二十余年にもなる私も改めて驚嘆するしかない。




では、海苔の立場は?
え?…、あ…、う…、



謎は深まるばかりなのである。

※ それにしても 冷やしうどんを店で食べるときに、時々薬味の一つとしてサクランボが載っていることがあるが、あれの意味はなんなんであろうか。