They feel Coke


 たまには診療の話でもしてみますが、ま、僕がアルバイト先でやっているちんけな外来などは、基本的にNormal ADLの中高年に降圧薬だとかコレステロールの薬やらだしたり、シャレで収まる程度の糖尿病の人を診たりする外来なんですけど。

 で、そんな中に、コーラが好きな人がおられる。複数。
 
 私も、子供の時分はコーラとか、ファンタとか、スプライトとかをよく飲んだ。ピーチネクター、ってやつもあったなあ。逆にあのころは缶入りのジュースといえばああいう甘いものか、UCCの赤と白と黄土色の缶のコーヒー程度しかなかったよね。

 そう、ちょうど僕が青春を過ごしたあたりが、ああいった清涼飲料水の過渡期だった。350ml缶というものがスタンダードになりつつあったし、缶もスチールからアルミになった。お茶などの甘くない飲料が缶で売られるようになったのもちょうどその頃のことです。

  それ以前は、自動販売機に入っている飲み物はどれも甘い飲み物で、あれは子供の飲み物だという分別があったような気がする。僕も、ああいう甘い飲料は思春期を過ぎるにつれて自然と飲まなくなった。大人になった今ではあれを350mlの量飲み干すのはちょっとつらいくらいだ。全然清涼じゃないよね。昔あったロング缶(あれは250mlくらいだろうか)は若者にはちょっと物足りないが大人にはちょうど良いサイズだったんじゃないかなと今となっては思ったりもする。
 
 外来に来ているコーラ好きはいずれも50代から60代の人たちで、もうずーっと30年間、毎日コーラを一本、欠かしたことがないという。ああいうものは子供から大人になる過程で自然に訣別するもんだという先入観がある私には、中年にさしかかった今でもコーラが好きな彼らはかなり意外であった。

 ちょっと興味を持ったので少し時間をとって彼らのコーラ観を訊いてみると、またこれ、なんとも嬉しそうに語ってくれるのである。風呂上がりに飲むコーラ、草取りをし、汗をかいた後に飲むコーラ。そののうまいことといったら!彼らの目は、間違いなく童心にかえっている。

 で、コーラなのよ。なぜか、そうゆーのは。スプライトが好きとか、ファンタが好きとかいう人にはあんまりお目にかからないのだ。

 彼らが子供の時分には、戦勝国アメリカというのは絶対的な憧れをもって眺められていたはずで、これは想像だが、そうした良きイメージのすべてがコーラに凝縮して投影されているのではないかと思う。それに、ファンタとかは現在に至るまでに何度も味が変わっているけど、コーラは基本的にはほとんど味が変わらないというのも理由の一つかもしれない。

 コーラのCMというと、ことさらに若者をイメージしたものが多いわけですが、たまにはコカコーラ・ボトラーズも、こうした中高年をフィーチャリングしたCMを作ってはどうかとは思う。むかしビールの宣伝で、真田広之が縁側でサンマ焼いてたりしたじゃないですか、ああいう感じの渋いコーラの宣伝はないもんですかね。コアなファンは大事にしなきゃ。

 ただ、一つ難点をあげると、僕の患者さんに関していえばその二人は軽度耐糖能異常ですから、「コーラを飲んでもノープロブレム」とはいえない。だから、胸を張って宣伝……というと少し躊躇するところもある。

 やはり、コーラの弊害はあるんだろうね。ただ、一日一本のコーラで30年糖尿にもなっていない人はおられるから(外来に来ている理由は高血圧だったように思う)、コーラを常用しても必ず糖尿病になるというわけではないようです。

 
 ちなみにこのコアなコーラ飲み達に、訊いてみました。

『ダイエット・コーラはどうなんです?』
 「……ああ、あれはちょっと味が違うから……」(下を向く)
「あれは駄目ですわ」
「別物ですよね」

『じゃあ、C2は?』
「何それ?」
「何それ?」
「何それ?」

 ほらね、ちゃんとコアなファンに届くように宣伝しなきゃ。ダイエットコーラにしてくれるとこっちは楽なんだけどなー。C2、もうないし。

 こんど、ペプシ・コーラについて訊いてみようと思う。

(Sep,2005初稿 Apr,2006改稿)