Grapefruit Juice



 眠い目をこすりながら研究室へ行く。
 朝、冷蔵庫で冷やされている100%グレープフルーツジュースを飲み、すこしすっきりする。
 

 グレープフルーツジュースというのはまことに不思議な飲み物である。

 グレープフルーツジュースにはある種の薬の代謝(分解と思っていただければいいです)をブロックする成分があったりするので、定期的に薬を内服している人の調子を狂わせたりする危険がありいろいろ厄介なのである。逆に言うとグレープフルーツジュースには他のフルーツジュースにはない不思議な酵素が沢山含まれている。きっとあの苦みの中にそういったもろもろの不思議な酵素が含まれているのだろうと思うのだが、そう思って飲むとあの苦みまでどことなく神秘的に感じられるのである。

 あの苦みが僕は好きだ。

 100%のグレープフルーツジュースを飲むといつも子供の頃の夏休みを思い出す。

 夏休みが始まる頃はちょうどお中元シーズンで、お中元に貰ったジュースがたっぷり冷蔵庫に貯蔵されてあった。そういう時以外は100%のジュースってあまり飲まなかった様な気がするし。果汁100%以外のグレープフルーツジュースはグレープフルーツの味がしなかった。だからグレープフルーツジュースというのは常に100%の記憶しかない。

 学校も休みで朝ちょっと夏休みの宿題を終え冷蔵庫を開ける。冷蔵庫の中にはいつもの麦茶以外にジュースが入っている。わくわくしながらプルリングを開ける。グレープフルーツの苦みと一緒にスチール缶の鉄の味がする。窓の外ではアブラゼミのワシワシワシという鳴き声が響き、8月以外では味わえないくっきりとした青空に真っ白な入道雲。汗のにおい。グラスの中で氷が溶け、カランと音を立てる。
 夏ってそういうものだった。
 

 今の僕はそのころとは全然違うけど、医局にはそういうお中元が届いていて、やっぱりちょっとわくわくしながらジュースを飲む。陽をたっぷり浴びてごわごわに渇いたTシャツ、首筋に感じる汗の感触を思い出す夏なのだ。


ところで、素朴な疑問なのだが、グレープフルーツはある種のカルシウム拮抗剤の作用を延長させる。チトクロムの競合のためとかなんとか、うろ覚えで定かではないのだが、代謝拮抗し、排泄を遅延させるのではなかったか。
 ということは、そこから一歩進んで、製剤として、グレープフルーツに含まれている酵素を含ませて、同じ用量でも長く効くようにする、というのはダメなのだろうか。これなら、少々グレープフルーツ食べても問題ないわけだし。
(初稿2003.7)