医者とネクタイ


医者の風景学

—mono mono シリーズ


ネクタイ



 医者の服装には大きく分けて何パターンかあるが、結局、
 「ネクタイ派」
 「ケーシー派」

 のいずれかに大別されてしまうであろう。

 その他に、誰にも推奨されないが「ゴルフシャツ派」「パジャマ(スウェット?)派」「グダグダ派」などの第三勢力があるが、「派」なんて呼べる代物ではない。

 だが、不思議なことにどこにいってもどこの医局でもこれらの「グダグダ派」のDr.は一定の比率でいるのだ。個人的な経験では常に15%以上は居たように思う。「派」と僕が敢えて呼ぶ所以だ。


ネクタイかケーシーか


 「前開き型白衣+ネクタイ」派か「ケーシー型白衣」派の比率は施設によって随分異なるような気がする。「隗よりはじめよ」という言葉があるが、科長の意向に添う場合が多い。


 おそらく、「ネクタイ派」は、意味論的には医者というのを「知的職業」ととらえているのではないでしょうか。つまり、「ホワイトカラーとしてのシャツ+ネクタイ」という記号ではないかと僕は思っています。

 対する「ケーシースタイル」ですが、これはワークウェアとしての意味と、(修道院が病院の役割を担っていた時代からの残滓なのか)やや聖職的な意味もあるのかなぁと思っています。いずれにせよ職業服です。ケーシースタイルの起源は僕はあまりよく知りません。ケーシーという名前が「ベン・ケーシー」というテレビドラマから来たというのは知っていますが、そこで発明されたわけではないと思うんですよね。
 

 ちなみに当院の名物内科部長は夏はTシャツ(ヘインズとかそんなやつ)の上に「長白衣(ジャケットタイプ)半袖型」という服装(分類不能。「グダグダ派」亜種か?)なので、僕らがどんな格好をしようが、咎めるものは誰もいません。

 院長(内科)は完全な「ネクタイ派」でおまけに内外問わず「ドレッシー」な方なので、そのことを苦々しく思っているのに僕らは気づいていますけど。 


医者がスーツを着ると似合わないのは…

 ところで、医者のスーツセンスは概してよくない。
 普段の勤務時間で日常で着ているわけではないので、「普段着」感覚ではないのである。その点、サラリーマンの方のほうが普段着として着こなすため、さりげなくおしゃれである(勿論、おしゃれな人は、ですけど)。

 医者の場合のスーツとは「よそゆき着」であることが多いのでどことなく高価で浮ついた着こなしになる。

 普段スーツを着ない人がスーツを着るとどのように悲惨かというと、大学生がコンパなどで着ていく服を想像すればよい。
 あれの延長である。
 しかも、お金は持っている。最悪のパターンである。

 特にバブル期が人格形成期であった若い医師達が研究会・学会などで一同に会すると、田舎ヤクザの集団にみまがうセンスを拝むことができる。

 理由はもう一つある。カラーシャツである。
 上述した「ネクタイ派」の医師は背広型の白衣の下にシャツ+ネクタイなのだが、いかんせん白衣が純白なのでシャツには色味をつけたがる傾向がある。勿論スーツを着るときもそのシャツを転用するわけだが、白衣の白と合わせていたのをさらにスーツの色と合わせる必要があるわけで、色がうるさくなる場合がしばしば生じるのだと思う(そしてその合わせ具合はサラリーマンの方よりは無頓着なのだと思う)。 


 しかし、おしゃれなネクタイをしているときに限って、検査の時に血が付いたり、あまつさえ、ウンコまでついちゃったりするものである。吐物とかもね。


(2002 5月初稿 同9月改)