急性膵炎




急性膵炎臨床診断基準

(厚生省特定疾患「難治性膵疾患」調査研究班 1990)
  1. 上腹部の急激な腹痛発作、圧痛
  2. 血中・尿中・腹水中に膵酵素の上昇あり
  3. 画像所見で異常像が認められる
上記3項目中2項目合致し、かつ他の膵疾患・急性腹症を除外したものを急性膵炎とする。ただし慢性膵炎の急性発症は急性膵炎に含める。手術または剖検で確認したものはその旨を付記する。




急性膵炎重症度判定基準

(厚生省特定疾患「難治性膵疾患」調査研究班 1990)
A:臨床徴候:  .
◯ショック収縮期血圧80mmHg以下、もしくは80mmHg以上でもショック症状を認めるもの。
◯呼吸困難人工呼吸器を必要とするもの
◯神経症状中枢神経症状で、意識障害(JCSU以上)を伴うもの。
◯重症感染症白血球増加を伴う38℃以上の発熱、血液培養陽性・エンドトキシンの証明、腹腔内膿瘍の認められるもの。
◯出血傾向消化管出血・腹腔内出血(Cullen徴候、Grey-Turner徴候)、DICを認めるもの。

◯1つor(・)2つ=重症
◯なし(・)1つ=中等度
◯なし(・)なし=軽症
B:検査所見
◯BE≦-3mEq/l
◯Hct≦30% (輸液後)
◯BUN≧40mg/dl または
  Cr≧2.0mg/dl
・Ca ≦7.5 mg/dl
・FBS ≧200 mg/dl
・PaO2≦60 mmHg
・LDH ≧700 IU/l
・TP ≦6.0 g/dl
・PT ≧15 秒
・Plt ≦10万/mm3

C:画像所見
・CT画像上でGradeWorX

重症:
臨床徴候および血液検査成績からは◯一項目でも陽性なら重症と判定。
予後因子(・)が2個陽性でも重症と判定する。

中等度:
全身状態が良好で循環不全、MOFが認められず、臨床徴候は見られない。
  検査値でも(・)1項目のみ異常を示す。

軽症:これらの予後因子をいずれも認めない。

重症度判定は原則として48時間以内に行い、以後経時的に検索し重症度を判定し経過を追跡する。


CT grade 分類

(厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班,1990)
Grade膵腫大*膵実質内部不均一**または液貯留 膵周辺への炎症の波及
T(-) (-) (-)
U限局性 (-) (-)
V膵全体 限局性 あるいは 膵周辺のみ
W程度は様々 膵全体 あるいは 膵周辺をこえる
X程度は様々 膵全体 かつ膵周辺や膵周辺をこえる  
*:なお,膵腫大の定義は「膵頭部で1椎体以上,膵体尾部で2/3椎体以上を膵腫大」 としたHaagaらの基準(Haaga JA,Alfidi RJ,Zelch MG,et al.:Computed tomography of the pancreas,Radiology 120:589-595,1976)を用いる。

**:enhanced CTで判定するのが望ましい。
Grade T膵に腫大や実質内部不均一を認めない。
Grade U膵は限局性の腫大を認めるが,実質内部は均一であり,膵周辺への炎症の波及を認めない。
Grade V膵は全体に腫大し,限局性の膵実質内部不均一を認めるか,あるいは膵周辺(腹腔内,前腎膀腔)にのみ炎症の波及や液貯留を認める。
Grade W膵の腫大の程度はさまざまで,膵全体に膵実質内部不均一を認めるか,あるいは膵周辺をこえて(胸腔,または左側の後腎膀腔)炎症の波及や液貯留を認める。
Grade X膵の腫大の程度はさまざまで,膵全体に膵実質内部不均一を認め,かつ膵周辺をこえて炎症の波及や液貯留を認める。
CTの施行時期:原則として入院48時間以内にCTをとって重症度を判定し,以後7日,14日などと臨床経過に合わせ経時的に施行するのが望ましい。

Ransonの予後判定因子

評価項目アルコール性、その他胆石症
1.年齢≧55歳≧70歳
2.WBC(/mm3)1600018000
3.FBS(mg/dl)≧200≧220
4.LDH(IU/l)≧350≧400
5.GOT≧250≧250
6.Hct(%)10以上低下10以上低下
7.BUN(mg/dl)5以上上昇2以上上昇
8.Ca(mg/dl)≦8≦8
9.PaO2(mmHg)≦60-
10.BD(mEq/l)≧4≧5
11.Fluid sequestraion(ml)≧6000≧4000
1-5は入院時、6-11は入院48時間以内に判定
6項目以上該当=重症,3−5項目該当=中等症
[Ranson,J.H.C.,Rifikind,K.M.,Roses,D.F.,S.D.,Eng,K and Spencer, F.C.:Prognostic signs and the role of operative management in acute pancreatitis. Surg. Gynecol. Obstet. 139:69-81,1974]


Prognosisに関する検討

厚生省基準:
 中等症での死亡率2%、重症は30%
Ranson分類:
 2点以下だと死亡率はほとんど0、3-5点で10-20%、6点以上で50%
ApacheII:
 9点以下だと全員生存、13点以上だと死亡の可能性が極めて高い。
APACHE II15点以下では死亡率がきわめて低いが、16点以上では動注療法を行っても死亡率は30%を越え、21点以上ではきわめて予後不良。
厚生省基準は重症度が多くなる欠点があり、Ranson分類は点数と予後が比較的相関するという利点があるがショック・意識障害などの臨床症状と膵の病態の評価がない、結果の評価に48時間かかるという欠点がある。

Evidence

厚生省特定疾患難治性膵疾患調査研究班により
1982-86 523施設にて2553症例の検討が行われた。
患者数:全国 14500人/年 (軽症10000、中等症 3000 重症 1500)
男性では40歳をピークに壮年層に、女性では60歳をピークに高年齢層に分布。

原因別の比率 重症膵炎(中等度)
アルコール性 39%(37%)、特発性 25%(25%)、胆石性17%(22%)

死亡:
中等症での死亡率2%、重症は30%
アルコール性23%、特発性40%、胆石性21%
 (薬物性の膵炎死亡率90%、術後性 49%)
発症から死亡までの平均日数 36日
(intensive careが普及した現在死亡率、死亡日数は改善されている)

1991-1995 重症急性膵炎全国調査:
浮腫性膵炎 13.8%、壊死性膵炎 61.7%、不明 24.5%
1987の調査では死亡率30%→17.8%に低下。

(この項に関しては教科書の抜き書き等を私がまとめただけなのでEvidenceないと考えて下さい)


update 2001/1/14